安くなったのに、なぜ詰まるのか
「約10円からAIが使える」——そんなニュースが出てた。DIFINESがRAKUQというサービスを発表したというもので、コストの壁を取り払って、もっと気軽に仕事でAIを使えるようにしようって発想なんだと思うわけ。
最初は「それで解決するといいね」という気持ちで眺めていたんだけどよ、でもよく考えてみると、「あ、コストじゃないんだよな」っていう考えの方が湧いてきたわけよ。
ひとりで判断しなきゃいけない仕事をしている人たちに話を聞いていると、「高くて使えない」という声よりも「試したけど、使えなかった」という声の方が多い。で、よく聞くと、使えなかった理由がだいたい同じところになるんだわけ。
出てきた文章が、自分の店と全然違う口調だったんです、と。
直す手間が増えて、かえって疲れた、と。
それはツールが悪いんじゃなくて、たぶん別のことが起きていると思うけどね。
AIに話しかける前に、橋がなかった
オジイが今作っているシステムで、まったく同じ構造の問題が起きたことがある。
ある時期、このサイトに関する情報を記録した場所(情報を記憶して次に活かす機能ね)がある。サイトの設計方針、コンセプト、目的——そういうものをちゃんとまとめてあったわけよ。ところが、そこに話しかけるための経路を作っていなかった。AIに「このサイトの方向性を教えて」と聞いても、「知るかボケ」と返してくる。情報は確かに存在しているのに、AIがそこに手を伸ばす手段がなかった、というわけね。
これは実際にやらかした話で、情報があれば使えると思っていたのに、使える状態にする機能の設計を忘れていたというわけ。道はあるのに、橋を架けていなかった。
仕事している最中に、いざAIを使おうって時起きていることも、構造が同じなんじゃないかと思う。たとえば自分の店の雰囲気、お客さんへの話し方、大事にしていること——それは経営者の頭の中に確かにある。でも、それをAIに渡す橋がない。だからAIは「どこにでもある文章」を出してくる。橋がないまま話しかけているから、当然そうなるわけで、それはAIの能力の問題じゃないと思うんだよね。
毎回前提を説明し直す疲れについて以前書いたことがあるけど、あの話も根っこは同じで、変わらないはずの情報を毎回ゼロから渡し続けているから消耗するわけよ。橋を一本作っておけば、その消耗が終わる。
橋の材料は、2つだけでいい
じゃあ何を橋にするか、という話になる。
オジイが考えるに、材料は2つあれば足りると思う。
ひとつは、自分の店らしい文章のサンプル。「うちのお客さんへの挨拶はこんな感じ」「値上げをお知らせするとき、こういう言い方をした」——そういう、実際に自分が書いた文章を3〜5文ほど集めたもの。これをAIに読ませると、口調が変わる。完璧にはならないにしても、「どこにでもある文章」と「自分の店の、自分だけの言葉」の距離がぐっと縮まる。
もうひとつは、発信軸を一文にしたもの。「誰に、何のために情報を出しているのか」を、短く言い切った一文。これがないと、AIは「万人に向けた無難な文章」を出し続ける。「60代の女性が一人でも安心して来られる着付け教室として発信している」のように言語化してあると、AIの出してくるものの方向が変わる。ようはペルソナの設定ってやつね。
この2つをセットで渡すと、毎回ゼロから直す手間が、ひと回り小さくなる。RAKUQのような低コストのツールを使い始めるにしても、この橋を先に作っておくと、最初の一歩が全然違うものになると思うけどね。
まず橋を作る——AIの口調に違和感を感じる人へ
発信の際にAIの口調に違和感を感じる人へ、試してほしいことがある。AIに文章を書かせる前に、このプロンプトを使って「自分の店のセット」を一度作っておいてほしいわけよ。
ステップ1: 自分の店の文章を3〜5文、AIに食わせて口調を覚えさせる
ChatGPTやClaudeなどのAIチャットに、以下をそのままコピーして貼り付け、カッコ内を自分の言葉に置き換えて使うこと。
あなたは、私の事業の文章を書くアシスタントです。
まず、私が書いた以下の文章3〜5文を読んで、私の口調・雰囲気・言葉の選び方を分析してください。
分析が終わったら、「この口調の特徴:○○○」と一言でまとめてください。
その後、私が文章の依頼をするたびに、この口調に合わせて書いてください。
【私が実際に書いた文章】
(ここに、自分のお店のSNS投稿・お客さんへのメッセージ・ニュースレター・チラシのコピーなど、実際に自分が書いた文章を3〜5文貼り付けてください)
【私の事業について】
事業の種類:(例:着付け教室 / 税理士事務所 / カフェ / 整体院)
主なお客さん:(例:着物を着てみたい40〜60代の女性)
伝えたいこと・大事にしていること:(例:初めての人が気軽に来られる雰囲気)
【発信軸(一文で)】
(「誰に・何のために発信しているか」を一文で書いてください。例:「地元の60代女性が、着物を日常に取り入れるきっかけになる情報を届けたい」)
ステップ2: AIの分析を読んで、ズレがあれば言葉で修正する
AIが「この口調の特徴:〇〇〇」と返してきたとき、「それは違う」と感じたら、そのまま言葉で伝えてよい。「もう少し柔らかい言い方が合っている」「もっと親しみやすい感じが好き」——そう言うだけで、AIは調整してくれる。
このやりとりが、橋を育てる作業なわけよ。
ステップ3: このプロンプト全体を保存しておく
メモアプリでも、テキストファイルでも、どこでもいい。次にAIで文章を作りたいときは、このプロンプトを先頭に貼り付けてから依頼するだけで、毎回ゼロから説明する必要がなくなる。
橋を作る話を書きながら、自分のシステムではその橋の数が増えすぎて、どこに何があるか把握できなくなってきているわけよ。「整理しよう」と思うたびに別のことを始めてしまうのは、我ながらてーげーだなぁとは思う。まあ、そういう人間が「橋を作っておくといい」と書いているんだから、説得力があるのかどうか、よくわからんけどね。また次回も楽しみにしてね!


