「全員が使う」を達成した組織が先にやったのは、ツール選びではなかった

問い

AIを導入したのに、使っているのは自分だけ。あとのスタッフや仲間は「便利そうだね」と言いながら、結局何も変わっていない——そういう状態、心当たりはないかねぇ。

道具の問題だと思って、別のツールを探したり、料金プランを見直したりする。でも、そこじゃないかもしれんわけよ。

現場

創業108年のみそメーカーが、社員のAI利用率86%を達成したという話が出てきた。しかも70代の会長まで使うようになったというんだわけよ。あぎじゃびよい。70代会長も動いた 創業108年みそメーカーがGemini利用率86%を達成した「3つの工夫」

読んで気になったのは、86%という数字じゃないわけよ。その手前にある「3つの工夫」の中身が、技術の話じゃなかったことにたまげたさ。

どのツールを選ぶか、の前に。誰をどの順番で動かすか、の話をしていた。

組織あるあるだけど、ベテランで「今更新しいことを」と今やってる業務の「型」を崩されたくないって思う人が、100年超も続いてきた会社には、当然おるわけ。そういう組織でAIが広がったとき、先に何が起きたか——そこに、小さな事業者でも参考にできるヒントが潜んるでるのよ。

補助線

昔、職場で複数の人間に新しいやり方を浸透させようとして、ひどく手こずったことがあるわけよ。

ルールもなく受動になりがちだった業務を計画的にこなしたい、そしたら仕組みを作れば良い。そこで、まず動いてもらおうとしたのは「話が早くて、理解もある人」だったわけ。論理的には正しい順番に見えたけど、結果として残りのメンバーには「あの人たちだけのやり方」という空気が漂って、なかなか広がらなかった。

変化管理の世界では、これはよく知られた失敗のパターンさ。最初に動くのが「すでにやる気のある人」だと、組織の変化としては広がりにくい。

逆に効くのは、一番抵抗感のある人、一番不安を持っている人を、最初の段階で巻き込むことやっさ。その人が動くと、周りの「自分には関係ない」という感覚がじわりと崩れていく。

108年企業の事例を見ると、同じ構造があると思うわけよ。70代の会長が使うようになった、という事実は結果として語られているけど、そこに至るまでに「誰を最初に動かすか」の設計があったはずで——そこが、86%という数字を生んだ本質じゃないかねぇ。

道具は同じGeminiで、技術的に特別なことをしたわけじゃない。設計の差が、浸透率の差になっている。

ところで、「毎回AIに同じことを説明し直している」という話でいうと、それもまた別の構造の問題で、Claudeに毎回「前提」を説明し直しているのは、仕組みの問題かもしれないでも書いたけど、個人の使いにくさと、組織で広がらない問題は、それぞれ別の原因を持っているわけさ。混同しないで考えた方がいい。

自分の事業やお店でAIが広がらないとき、道具のせいにする前に、「誰が一番尻込みしているか」を見た方が早いかもしれん——オジイはそう思うけど、みんなの現場ではどうかねぇ。

持ち帰り

小さな店や事業、少人数のチームを回している人に向けて、ひとつ試してほしいアイデア出しがあるわけよ。

ステップ1: 「一番”改善”から遠い人」を1人、名前で思い浮かべる

職場・お店・チームの中で、状況や環境を変えたくない人、もしくは一番「自分には関係ない」と感じていそうな人を1人だけ特定する。漠然と「みんな」を動かそうとしないこと。1人に絞る。

ステップ2: その人が無理なく試せる場面を、AIに設計してもらう

ChatGPTやGemini等のAIチャットに、こう投げかけてみるさ:

「〔その人の役割や状況、細かく設定したほうがいい案出やすい〕の人が、業務改善で今とは違う業務を受け入れるとしたら、どんな場面が一番ハードルが低いと思いますか? 具体的な使い方を3つ提案してください」

出てきた3つの候補の中から、「この人ならやれそう」と自分が感じるものを1つ選ぶ。ここは人が判断する部分やっさ。AIの提案はあくまで素材で、「この人の性格だったら、こっちの方が続きそう」という読みは、あなたにしかできない。

ステップ3: 「背中を押す役割」を自分がやると決める

ツールや方法を紹介するだけでは動かないわけよ。「一緒にやってみよう」と声をかける、最初の1回を一緒に試す、感想を聞く——そのどれかを、自分の役割として決める。AIが設計した入口を、人が開ける。その役割分担が出発点になるわけさ。

オジイ自身も「話の早い人」から始めてしまいがちで、それで何度も同じ轍を踏んできたわけよ。今作っているAIエージェントでも、”誰が一番遠いか”を想像しながら設計しているけど、自分が開発者でありながら自分自身がその役割を一番サボっているのは、ちょっとやっけーな話さ。また次回も楽しみにしてね!