「法的にOK」を確認したのに、なぜ炎上するのか——生成AI時代にひとりのクリエイターが担う文脈の判断

問い

素材を使う前に、ライセンスをちゃんと確認した。商用OKと書いてある。著作権も問題ない。——それで安心して使ったら、なぜかクライアントから「ちょっとまずかったかも」と連絡が来る。

そういう経験、ひとりで制作を請け負っている人なら、一度や二度はあるんじゃないかねぇ。「法的にOK」と「炎上しない」は、実は別の問題なんさ。権利の白黒と、受け取られ方の白黒は、最初から別の軸で動いている。

現場

【アーカイブ録画配信】炎上・トラブル回避!著作権×生成AIリスク管理ガイド【Vol.1】という記事が出ていた。タイトルに「SNS時代の”法的OKでも危険”な境界線」とある。

この一文を読んで、オジイはすぐに「ああ、これは権利の話じゃなく、文脈の読み方の話だ」と思ったわけよ。

AIが素材の生成をものすごい量でやれるようになった今、クリエイターが扱える素材の数は以前の比じゃない。フリー素材のサイトに行かなくても、テキストを打てば画像が出てくる。ライセンスの問題がないと判断した素材を、次から次に使える状況になっている。

ただ、素材の量が増えるほど、増えているのはファイルの数だけじゃないんさ。「この素材を、このクライアントの、この文脈で使っていいか」という判断の数も、同じように増えていく。しかもそれを、ひとりでやるわけよ。大きな制作会社なら、素材のチェックをする人、クライアントの業界を知っている人、過去の炎上事例を把握している人がそれぞれいる。でもひとりで請け負っている人には、それが全部自分にのしかかってくるわけさ。

素材の量と判断の量が、同時に増えている。ここが今の問題だと思うわけよ。

補助線

クリエイティブディレクションをやっていた頃、「権利上は問題ないけど、これ使っていいかな」と迷うことは珍しくなかった。

たとえば、フリー素材で商用利用可の写真があったとする。でも同じ写真が、別のある会社の広告でも使われていた——そういう場合、権利は問題なくても「かぶっている」というリスクがある。クライアントが特定の業界でブランドを作っている会社なら、「どこでも見かける素材感」は、それだけで信頼を削ることがある。

これが組み合わせや文脈の問題で、法律では判断できない部分やっさ。「ライセンスがある」ということと「この文脈で安全に使える」ということは、最初からイコールじゃない。

AIの素材は、この判断をさらに難しくする。理由は二つある。

一つは、同じプロンプトを打てば、世界中の誰もが同じような画像を出せるということ。フリー素材の「かぶり」どころじゃなく、「誰でも再現できる素材」が一瞬で手に入る状況になっている。クライアントのブランドの独自性を守りたいなら、使い方に相当気をつけなきゃいけない。

もう一つは、AIが生成した素材の元ネタがどこから来ているかが、見えにくいことやっさ。これは以前AIに「パクられる」より怖いのは、「選ばれなくなる」ことだったでも触れたけど、学習データと生成物の間に透明性が薄い。権利クリアと確認できたつもりでも、クライアントの業界によっては「これ、どこかで見た印象がある」と感じさせるリスクが残る。

じゃあクリエイターは何をすべきか、というより——昔から現場でやってきたのは、「権利確認の後にもう一つ問いを立てる」ということだったと思うわけよ。

「これはクライアントの顔に泥を塗らんか」という問いやっさ。業界の慣習、競合の空気感、読者層の感受性——そういうものを全部ひっくるめて、「この素材をこの文脈で出して、どう受け取られるか」を想像する。法律の話じゃない。人の反応の話やっさ。

これは昔からあった判断だけど、AIが素材の量を爆発させた今、その判断の数がひとりのクリエイターに集中していく構造になっていると思うわけよ。

持ち帰り

ひとりで制作を請け負っている人に、次の案件でそのまま使えることをひとつ持って帰ってほしいわけさ。

権利の確認をした素材や参照元を一つ取り上げて、ChatGPTなどに以下のように投げてみること。

ステップ1: AIに懸念点を出させる

素材の内容と使う文脈を短く伝えて、こう入力してみる。

「〔素材の説明〕を〔クライアントの業種や読者層〕向けの〔媒体・用途〕で使おうとしています。法的な問題はないとして、受け取られ方として気をつけるべき点はありますか」

AIは懸念点をいくつか出してくる。全部が当たりとは限らんけど、自分だけで考えると見えにくかった角度が出てくることがある。

ステップ2: AIが出した懸念を素材に、自分が文脈を判断する

AIの回答を読みながら、クライアントの顔・業界・読者を実際に思い浮かべること。「この懸念はうちのクライアントには関係ない」「いや、この業界ではこれがでーじ(すごく)まずい」——その判断は、クライアントを知っている自分にしかできんわけよ。AIが出した懸念を踏まえて、「それでも使うか、差し替えるか」を自分で決める。

この二段階がポイントやっさ。懸念を洗い出すのはAIに任せ、文脈を判断するのは自分がやる。権利確認の後にこの問いを立てる習慣が、「法的にOKなのに炎上した」を一つでも減らせると思うわけよ。

自分も昔、「権利OK・文脈アウト」をやらかしたことがあるわけよ。クライアントからじゃなく、印刷物が刷り上がった後に自分で気づいたやつ。あれはこたえたさ。今は作っているAIエージェントに、素材の使用記録と一緒に「どの文脈でOKにしたか」を残せる仕組みを入れてるんだけど——つくづく思うのは、判断の中身じゃなくて「なんで通したか」を残すのが、いちばんやっけー(厄介)だということやっさ。オジイは作ってるそばから忘れていくからよ〜。ってことでまた次回も楽しみにしてね!